総合内科よわ医の貧弱ブログ

貧弱な総合内科医が好きなことを好きなように書きます。

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環境が人を成長させるのか?

はじめに

 今回は環境が人を成長させるのか?というテーマで私の経験を元に書かせていただこうと思います。主に仕事についです。

まず真っ先に結論です。

今回のまとめ
  • 環境は重要であるが、どのような環境が自分の成長に重要なのか認識しないといけない。

  • 環境にこだわりすぎると、環境を言い訳にしたり、その環境に属することがゴールになりかねない。

  • 人は一人で何かを成し遂げたときに成長する。環境はその補助に過ぎない。

環境選び

 まずは自分の経験をお話しします。医学生は大学5年になると、自分の初期研修先を選ぶために病院見学に行くようになります。早い人はもっと早くから行っているでしょう。

 

私はいわゆるブランド病院での研修を考えていました。ペーパーテストの結果は結構良かったので、自分はレベルの高い環境でいける!と勘違いしていたのです。

 

医師であれば一度は名前を聞いたことがあるような病院に見学を申し込みました。普通は病院見学は1日のみですが、その病院はなんと3日間来てほしいというのです。その時点でかなり尻込みしてしまいました。

 

病院見学当日、他大学の医学生と2人で見学を行うことになりました。一緒に回って下さる初期研修医2年目の先生を紹介され、見学がスタートしたのですが。。

特に印象に残っているのが

  • 研修医室がカオス。もう○日家に帰らず寝袋で生活している研修医、明らかに医師の体型じゃないムキムキ研修医、ケースレポート(もちろん英語)をすさまじい速度で書いている研修医などヤバそうな研修医が多数。
  • 指導なんてほぼ皆無。有名な先生がちょろっとカンファレンスに来るだけ。集中治療室の管理もほとんど研修医のみで回していた。
  • だいたい半数の研修医が途中で辞めてしまう。
  • 当直回数が尋常じゃない

 

これはつまり、環境と言うより元々才能のあった人が選抜されて残っただけでしょう。環境が良かったから良い医師が育てられたかというと全く違いますよね。

 

このような厳しい環境に耐えられる自信があれば良いと思いますが、そうでない場合は最悪の場合体調やメンタルを崩していろいろと失うことになりかねません。

 

環境を選ぶ際にどうしてもネームバリューや有名人に惹かれてしまうと思いますが、それは危険です。本質を見誤らないようにしましょう。

 

自分に適した環境を選ぶために

 では自分に適した環境を選ぶにはどうするのか?

これは色々な所に行って自分にとって何が大事なことなのかを探っていくしか無いと思います。

 

仕事をし始めたときにいきなり最適な環境なんてわかりっこありません。それに、自分が環境に適応していくと言う考えが全くないとどのような環境に属してもすぐに自分に合わない、ここは駄目だという人間になりかねません。

 

環境にこだわりすぎない

 あの大学に入れば、あの企業に就職できれば自分は成長できるんだ!という人結構多いと思います。ですが、どんな環境でも全く成長できないと言うことは無いと思うんですね。

 

私の場合初期研修を大学病院で行いました。正直これは正しくなかったと思います。大学病院って医者がメチャクチャ多いんですね。それに加えてカンファレンスなどの学術的なイベントも多い。

 

 そのため、大学病院の初期研修医に割り当てられる仕事って手技はほとんどなくて点滴確保や採血ばっかり。それに加えてよくわからないカンファレンスの準備など、医師としての成長に必要かというと微妙なものが多かったです。

 

ですが、全く役に立たなかったかというとそうでもありません。論文を読んだり学会発表を行う機会が多く、その辺りの指導は良くしていただきました。後期研修医になった際に、論文を読むことがあまり苦痛にならなくて本当に良かったと思います。

 

たとえ今の自分にとって最善の環境で無くても、学べることがゼロと言うことは決して無いと思うのです。

 

どのようなときに人は成長するのか

 これは私明確な答えがありまして、一人で最初から最後まで仕事をこなしたときです。

※もちろん一人と言っても多くの人のサポートがあることは忘れず、常に感謝の気持ちを持つことは重要ですが。

 

自分が医師としてこれは成長したな、と思った時期は3つあります。

  1. 後期研修医で地方の基幹病院に出向したとき
  2. 大学に戻って主治医をしたり後輩の指導をするようになったとき
  3. 現在場末病院で相談できる人がほぼ皆無の状況で働いているとき
1.後期研修医、地方の基幹病院時代

 1は自分の医師人生で本当に重要な時期でした。とにかくすべてが初めてで、一人主治医、一人内科当直、一人集中治療室管理など色々なことを一人でやるようになったのです。

 

上級医が居たので本当に困ったときや危ないときは泣きつくこともありましたが、できるだけそうしないように心がけました。

 

自分ができなくても誰かが何とかしてくれるという考えで仕事をすると、自分で何とかしないといけないと思えません。この緊張感が在るか無いかで大きく成長率が変わります。

2.大学病院時代

1の後期研修が終わってすぐ大学に戻り、大学でも主治医をやるようになりました。地方の病院と違い大学病院は専門性の高い疾患を扱うので、論文やガイドラインを読み漁り必死に食らいつきました。

 

後、個人的に大きかったのは後輩の指導です。大学病院は教育機関でもあるので後輩の指導も大切な仕事です。興味のない人も少なくなかったですが、自分はとても好きでした。

 

好きな理由としては①自分がよくわかっていないとよい指導ができない②後輩の成長を見るのが楽しかったからです。

 

 勉強でも仕事でもそうだと思うのですが、教えるっていうのは本当に良いトレーニングです。試しに自分が分かっていると思うことを誰かに教えてみてください。

 

本当によくわかっていないとすぐにぼろが出ちゃいます。自分は後輩につつかれてまずい!と思って勉強しなおしていました。

 

大学病院でも成長はできたと思いますが、一つ大きな問題がありました。それが医者が多いということです。大学病院では10年目くらいの医師でも中堅とみなされてしまうのです。

 

そのため、まだ自信が持てない手技や手術も後輩がいれば譲ってあげないといけないのでした。これは自分の成長にとっては妨げになってしまったと思います。

 

3.現在の場末病院

 現在の病院で働くまでは、もうここで成長することはないんだろうなと思っていました。その予想は良い意味で裏切られることになります。その理由は

 

  • 自分より戦闘力の高い内科医がほぼ居ない

  • 相談できる医師居ない

  • 専門外の疾患でも自分で対応するしかない

  • 今までやったことが全くないこと (気管切開など)もやるしかない

大学病院では基本的にすべての科の医者が存在します。なので、運悪く専門外の疾患を引き当ててもすぐに相談することが可能です。

 

今の病院では極端に医者が少ないのです。専門外であっても相談する医師がそもそもいませんし、すべてを基幹病院へ転送することもできません。だれも責任を取ってもくれません。

 

このような環境に置かれたら、必死に勉強して何とかするしかないのです。結果的に医師人生の中で今が一番成長できていると感じています。

 

伸びる奴は放っておいても伸びる

 こんなことは言っては元も子もないですが、すごく成長する人って気が付くと勝手に成長していることが多いです。

 

これはつまるところ自分が責任を取る立場だったらどう行動するのか、ということを早くから考えられているからだと思います。

 

このような考えを持つことに環境が影響することは否定しません。ですが、成長できる人はたとえどのような環境であろうと一人で行うならどうするのかを考えられるのではないでしょうか。

 

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

良い環境というものは間違いなくあります。切磋琢磨できる同期や優秀な上司はいるにこしたことはありません。ある程度まで成長するには環境も重視すべきでしょう。

 

ですが、自分が責任を取るしかない環境で鍛えられた人間は強いです。これはいわゆる"良い環境"に属しているかが重要ではありません。

 

自分しかいない、自分がどうにかしないといけないという意思を持って行動するかどうかが重要なのだと思います。

 

地方に飛ばされる、などの一見不遇な環境が実はチャンスであることも少なくないのです。