はじめに
今回は前回の話の続きです。良くない医師がしていることを考えていきます。
それって、"していること"で言ってたことの逆をしている医師じゃないの?
そうなんですが、それでは面白くないので"していること"で触れなかった点で自分が思っていることを書かせていただきます。テーマが壮大すぎるので、今回は結果的に薬の処方に関して絞らせていただきました。
- 処方がおかしい医者が少なくありません。わかりやすい例としては風邪に抗菌薬を処方する、といった具合です。
- 薬が多いことはよいことではありません。少なく済ますに越したことはないのです。ポリファーマシーは大きな問題であり、特に高齢者が陥りやすくなっています。
- 医者は選ぶ時代です。疑問を感じたら医師に質問や意見をしてみましょう。
おかしな処方をしている
外来、特に内科となるとなんといっても薬の処方でしょう。患者さんとしては薬をもらってナンボ、とお考えの人も少ないと思います。
ですが、この薬の出し方がおかしい医者が少なくないのです。以下、できるだけ具体例を挙げて説明します。
薬の使い方が間違っている
これはもう一つ声を大にして言いたいことがあります。それは、抗菌薬の処方についてです。昔は抗生物質とも言いました。
皆さん、近くのクリニックなんかで風邪でかかった際に抗菌薬が出たことありませんか?
それ、9割方不要です。
で、でも実際に処方してもらってよくなったし!!
そりゃそうでしょう。風邪はほっといても治るのですから。と、まあ毒を吐くのはほどほどにしておきます。
そもそもいわゆる風邪って正式には風邪症候群と言いまして、ほとんどがウイルスの感染によるものなのです。今流行中のインフルエンザ、新型コロナもウイルス感染症です。
ウイルスに抗菌薬を使っても、意味は皆無です。それどころか、抗菌薬は副作用が少なくないのでむしろ悪さをする可能性すらあります。
風邪は薬で治すのでなく、自分の免疫と体力で治すのです。どうしてもきつい症状があれば、それに対するお薬だけで十分です。
特に私が本当にやめてくれ!と思っているのが風邪に経口の第3世代セフェムを処方することです。具体的な名前を挙げておくと (製品名) フロモックス、メイアクト、バナン、セフゾンなどです。
あっ、その薬風邪の時に処方されたことある!
って方、結構多いと思います。この第3世代セフェム、点滴は非常に良いお薬なのですが内服はダメです。はっきり言って使い道がほぼない。具体的には
などなど。専門用語を使って申し訳ございません。大事なことはこれらの内容でなく、とにかく使い道がないということなのです。こんな薬を、しかも風邪に処方するなんてはっきり言って言語道断なのです。
感染症科の先生たちによる血のにじむような努力により、抗菌薬の無駄な使用というのはかなり減りつつあります。本当に頭が上がりません。。
この風邪に抗菌薬、というのは氷山の一角です。いくらでも間違えた薬の使い方があるのですが、タチが悪いのは患者さんはまずいことをされていることに気が付けない点でしょう。後述する通り、やたらと薬が出る場合は怪しいです。
薬の変更がほとんどない、やたらと薬が変わる
以下のような場合はおかしいと思った方が良いです。
- 薬がもう何年も変わっていない。
- 古い薬が多い。
- 新しい薬が出るとすぐに変更になる
患者はロボットではないので、つねに状態が変化します。極まれに非常に落ち着いた方もいますが、適宜薬の変更が必要になるものです。同じ処方 (do処方と言います)が繰り返されている場合は、医者が何も考えていない可能性があります。
今ではあまり使われない薬がずっと使われていたりするのは良くないことです。ただし、古い薬が何でも悪いわけではないのです。古い薬はデーターが多いので、使いやすいというメリットがあります。
むしろ新しい薬ばかり使いたがる医者は危険です。新しい=良い薬ではありません。出たばかりの薬は古い薬の逆でデーターが少ないので、予期せぬ副作用がおこることがあります。そのため、新しい薬ほど慎重になる必要があるのです。
やたらと新しい薬を使いたがる医者は、よい面ばかりを見てリスクを考慮できない医者である可能性が高いのです。
ポリファーマシー
皆さんはポリファーマシーという単語をご存じでしょうか。
ポリファーマシーとは、「複数」を意味する「poly」と「調剤(薬局)」を意味する「pharmacy」からなる、「害のある多剤服用」を意味する言葉です。
重要なのは「害のある」という部分。単純に「服用する薬の数が多い」ということではありません。
必要とする以上の薬や不要な薬が処方されていることによって、有害事象のリスク増加や、誤った方法での服薬(服薬過誤)、服薬アドヒアランス低下などの問題に繋がる状態を指します
(ポリファーマシーとは? その定義と問題点、対策について解説 | なるほど!ジョブメドレー のポリファーマシーとはから一部引用)
正直なところ私の言いたいことはすべて上のページに含まれてしまってはいるのですが。。少しお堅いので、砕いてお話をします。
世の中にはやたらといっぱい薬を出す医者というのがいます。いっぱい薬を出してくれて、すごく自分のことを大切に考えてくれている。いい先生だなー。なんて考えていませんか?
それ、大きな間違いです。薬が増える弊害について簡単にお話をします。
1.副作用のリスクが増える
有名な言葉?に薬はリスク、というものがあります。副作用のない薬はありません。おそのため、確率論的に飲む薬が増えれば増えるほど副作用のリスクが上昇します。
2.服薬アドヒアランスの低下
いっぱい薬があると飲むだけで一苦労です。飲むのがめんどくさい!となって飲まなくなるパターンもあれば、多すぎてどれを飲んだかわからなくなって飲まなくなることもあるでしょう。
3.金銭的な負担
当たり前ですが、薬が増えれば増えるほどお金がかかりますね。
高齢者とポリファーマシー
高齢者は特にポリファーマシーになりやすいです。その理由にを以下に記します。
1. 疾患を多数抱えている
高齢者はいっぱい病気を持っていることが多いのです。生活習慣病は言うまでもありませんが、認知症であったり、骨粗しょう症やそれを契機とした骨折、不眠症など挙げたらきりがありません。
それだけでも薬が増えるのですが、さらなる問題は複数の医療機関に通院をしていることです。整形外科はA病院、内科はB病院、不眠のお薬をもらうためにC医院といった感じです。
どうしてこうなってしまうのか?総合病院へ行けばいいじゃないか!というのは正論です。しかし、そうはならないのです。理由はいくつかありますが、最大の理由は待ち時間ではないかと思います。
自分も今、そして過去にはほとんどが所謂総合病院勤務でした。外来をやっている身として申し訳ないのですが、もう信じられないくらい待ちます。1時間なんてマシな方で2時間は普通、ひどいときはそれ以上待つのです。高齢の方にはこれはきついと思います。
医師って他の医療機関の医師が出している薬に意外と無頓着なんですよ。私は初診の際に面倒とは思いつつ、お薬手帳で内服薬を確認してカルテに記載するようにしていますが、やらない医師も少なくないです。
他の医療機関の処方を意識せずに、好きなように処方をしてしまう医師が多いのです。
なので、多数の医療機関に通うリスクの高い高齢者はポリファーマシーになりやすいのです。
2. 根強い"お医者様"思考
これは自分の感覚になってしまいますが、80歳以上の方で高齢になればなるほど医者のことをお医者様、と思っていらっしゃる印象です。このような方々は、医者はえらい、医者の言うことは黙って聞いておけばよい、医者に意見や質問をするのは悪いことと本気で思っているのです。
当然医者は偉くもなく、患者さんから意見をいただきたいのですが。。お医者様思考があると、どんどん薬が増えることに対して疑問を持っていたとしてもそれを抱えたままになってしまうのでしょう。
3. 窓口負担割合が低い
後期高齢者の方は窓口負担の割合が低いですが、正確には低かったと書くべきかもしれません。負担額が少ないから気軽にぽんぽんと薬を増やしてしまう医師が存在します。
全く持ってとんでもない話です。
上にも書いた通り、今後高齢者の負担額は増えることはあっても減ることはないでしょう。詳しく知りたい方は以下のリンクから飛んで読んでみてください。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は良くない医師が外来でしていることを書かせていただきました。薬の処方のことだけになってしまいましたが。。
違和感を感じた場合は、以前の記事でも全く同じことを書きましたが医師に質問や意見をぶつけてみましょう。
この薬は必要なのか?薬が多すぎると思うのだが・・?など。対応が適当であれば、よい医師とは言えないと思います。
病院や医師も選ぶ時代です。コロコロ変えるのも良くないですが、思い切って変えてみるのもよいと思います。皆様が良い医師のもとで治療を受けられることを望んでおります。