はじめに
救急外来関連の話で、今回は内科当直をやっていると必ず1度は遭遇するであろう話をしてみたいと思います。もしかしたらシリーズ化するかもしれません。第一弾は、夜中に血圧を測ってしまったおばあさん、です。
丑三つ時の救急要請
ある日の内科当直。その日は比較的平和な当直であり、0時くらいに当直室で早めに休んでおくことにしたのでした。このまま朝まで逃げ切れるか、と思っていたのですが、丑三つ時に当直PHSが鳴ってしまったのでした。
※当直医は基本的に夜間は当直室で待機をします。この当直室は綺麗なところであればビジネスホテルのような所もありますが、場末の旅館のようなとんでもない部屋もあります。いつか記事にしたいと思います。
眠い目をこすりながらPHSに出てみたところ。。
はい、、○○病院当直医のよわ医ですが。。
お疲れ様です!○○救急隊です!収容要請でございます!患者さんは○○歳の女性です。高血圧症、骨粗鬆症にて近医に通院をされています。本日午前2時頃に目が覚めた際に血圧を測定したところ、160/100と高値であったようです。再度測定をしてみると、180/100とさらに上昇し、気分不快もあり救急要請となりました。
いつも思うが、なんで救急隊の方々って真夜中なのにこんな元気なの?
脳卒中でなければいいな、なんて思いながら、
わかりました、あと何分で到着しますか?
と言って準備を始めたのでした。
ニコニコ、かわいいおばあちゃん!?
まもなく救急車のサイレンが聞こえてきました。さあ、どんなぐったりした婆さんが来るのか、と待ち構えていたのですが、、
ありがとねえ、一人で歩けるから大丈夫だよ、よっこいしょっと。。
と言いながら、すたすたと診察室にしっかりとした足取りで歩いてきたのは、とってもかわいいおばあちゃん (以下Aさん)でした。表情もニコニコ。私は拍子抜けして、思わず笑ってしまいました。
Aさん、夜中に大変でしたね。今日はどうなさったんですか?
夜中に目が覚めた時に、血圧を測ってみたの。そしたらとっても高くてねぇ。びっくりしてもう一回測ったら、もっと高くなって。もうびっくらこいて救急車を呼んじまったんだよ。
試しに血圧を測定してみると、とってもいい値。。
良かったですね~、ちょっと測ったときに気分が高まってたのかもしれませんね。お薬はきちんと飲み続けてくださいね。
いやー、恥ずかしいねえ。先生の顔を見たら安心したよ。本当にありがとうねえ。
そう言うと、おばあちゃんはしっかりとした足取りで帰っていったのでした。
私の心の声
私が正直に思ったことを書かせていただきますと。。
なあ婆さんや、何で夜中に目が覚めて血圧を測ろうと思ったのだ?最新の知見とエビデンスをもとに俺に納得できる説明をするんだ!どうだ!できるのか!
まあ、そんなこと言っても仕方ないんですけどね。。血圧って、実は計測する環境やその時の気分なんかで容易に値が変わってしまうのです。有名なところで白衣高血圧というものがありますね。
病院で血圧を測ると、家で測るよりも高く出てしまうというやつです。これは、無意識のうちに良い血圧が出ますように!って思ってしまうからなんですね。最新の高血圧症ガイドラインでも、診察室血圧よりも家庭血圧が重視されています。
なので、血圧を測定して高い値が出ても、少し深呼吸でもして時間をおいて測りなおすとたいていは良い値が出ます。大切なのは、焦って何回も血圧を測らないことです。今回のようにもっと悪い値が出て負のサイクルに陥りますよ!
私は医者になってから、この夜中に血圧を測ったら高くて救急車を呼んだ、というのを3回も経験しています。しかもなぜか決まってかわいいおばあちゃんなんですよね。。
まあでも、おばあちゃんが脳卒中などでなく元気だったからいいかーってなるんですけどね。
さいごに
内科当直をやってきた先生であればすごく共感できるであろう、内科当直あるあるを書かせていただきました。救急と言うと命にかかわるようなものばかり来院すると思ってましたが、実際はこういう救急じゃなくていいじゃん!ってのが結構多いです。
皆さんも夜間に救急受診を迷った際には、是非私の過去の記事をご覧いただけますと幸いです。
まだ何個か内科当直あるあるがあるので、不定期でシリーズ化できればいいなと思っております。最後まで読んでいただきありがとうございました。