総合内科よわ医の貧弱ブログ

貧弱な総合内科医が好きなことを好きなように書きます。

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時間外救急外来とはどんなところ?

はじめに

 以前から、時間外救急外来ってどんなところ?という記事を書きたいと思っていました。しかしながら、検索をかけてみると大量に有名な医療機関やクリニックが正しい情報を提供していたため、記事にする必要は無いかなと思っておりました。

 

 今回、能登半島地震にて5歳の男の子が熱傷 (やけど)を負った後に亡くなるという痛ましい出来事がありました。ネット上では、時間外救急外来にて診療を担当した金沢医科大学附属病院への批判が目立っています。

www3.nhk.or.jp

 

 一臨床医として今回の出来事や時間外救急外来についてやはり書いてみたい!という気持ちになったので記事を書いてみようと思います。今回は時間外救急外来について書きます。

 

今回のまとめ
  • 時間外救急外来は日中の外来とは異なり、機能が大きく制限されている。日中と同じ対応を期待してはいけない。
  • 基本的には、あくまで今すぐに介入しないと、命の危機、もしくはそれに準ずる状態であるかどうかのお判断を行うのが目的。受診するか迷った場合は、まず落ち着いて医療機関に電話をして相談しよう。
  • 医療も資源であり、限られている。高齢者の増加や働き方改革の開始に伴い、救急医療はさらに厳しい状況に立たされる。適切な時間外救急外来の利用をお願いします。

 

時間外救急外来ってどんなところ?

 簡単に一言で言うと、今即座に介入をしないと命に関わるかどうかを判別する外来です(軽症患者を対象とした夜間診療所もありますが、今回は病院を想定しています)。反発を承知で書くのであれば、ちょっと調子が悪いとか、薬がほしいという理由では受診を控えなければいけない外来なのです。

 

 そもそも時間外救急をどのような体制で行っているかを説明します。パターンとしては

  1. 各科当直 (病棟, 外来当直が分かれている)+研修医付き。検査は24時間何でもできる。 : 最強の体制。大学病院の本院や有名基幹病院クラス
  2. 内科・外科当直+研修医付き、その他の科はオンコール (呼ばれたら病院に来る)体制。検査は一部限定されるが、基本的に何でもできる。 (大学病院の分院や、基幹病院クラス)
  3. 内科・外科当直のみ, 研修医は居たり居なかったり。その他の科はなし。検査はかなり限定されるが、一応24時間できる。(一般市中病院クラス)
  4. 内科or外科当直のみ。研修医なし。検査は血液検査ほぼできず、画像はいつでもできるor検査技師オンコール。(場末病院)

 こんな感じだと思います。私はすべてのパターンで勤務歴があります。現在私は4ですが、正直当直はかなりキツいです。外来だけで無く、院内のことも対応しなければいけないのです。

 

 私も医者になる前は全然わかっていなかったので、偉そうなことは言えないのですが、24時間営業とはいえ、かなり機能が制限されているということをお伝えしたいのです。コンビニやファミレスなどは日中とさほど変わらないかもしれませんが、病院は本当にギリギリの体制でやっています。

 

 いやいや、3とか4の医療機関はそうかもしれないけど、1とか2は医療スタッフがたくさん居るんだからごちゃごちゃ言うな!という意見もあるかもしれません。ですが、大学病院や基幹病院がスタッフを揃えているのは重症患者を扱うためであり、決して楽をするためではありません。どの病院も夜間は厳しいのです。

 

受診に迷ったらどうすればいい?

 そんなこと言われたって、夜間につらくなったらどうすればいいんだよ!日中は忙しくて受診できないんだよ!という気持ちになりますよね。

 

 まず大事なのは、落ち着くことです。馬鹿にしてるかと思われたかもしれませんが、まじめに言っています。人間、そう簡単に命の危機には陥りません。大部分がその日の受診すら必要ないのです。落ち着いたら、受診しようと思っている医療機関に電話をしましょう。どのようにしたらよいか、指示をしてくれるはずです。

 

どこに連絡してよいかわからない場合は、自分の住んでいる区役所や市役所のホームページを見てみましょう。夜間救急についてのページが用意されているはずです。

 

 連絡なしでの受診 (いわゆる直来)はお勧めしません。直来の患者は何も情報がないので、よほどの重症でなければ後回しにされてしまいます。ただでさえ辛くて受診しているのに、待ち時間が長いのは耐え難いでしょう。

 

 それを踏まえたうえでお願いです。できるだけ日中に医療機関を受診しましょう。もちろん、夜間に急に症状が出てきて、本当につらいこともありますから、夜間の受診をするな!などという気はありません。

 

 しかしながら、夜間はそもそも検査もあまりできないし、薬の処方もかなり限定されているのです。お金も日中よりかかります。厚労省をはじめ、各種医療機関が時間外救急外来について啓蒙活動を行っているのですが、実際に救急外来に携わる身として、とても浸透しているとはいいがたいと感じています。

 

 googleなどで病院のレビューを見ると、時間外救急外来で検査をしてもらえなかった、とか、薬を出してくれなかったなどのレビューがずらっと並んでいるのです。正直、悲しい気持ちになります。

 

限りある医療資源を大切に

 今後救急医療の需要はさらに増えると思います。最大の要因は高齢化です。高齢者は急に状態が悪くなることが少なくありませんし、簡単に医療機関を受診できないからです。しかしながら、供給が増えるかというと、それはないと思います。

 

yowaiblog.hatenablog.com

 

以前にこちらの記事で書かせていただたいたように、4月から働き方改革が始まります。詳しくは記事を見ていただきたいのですが、端的に申し上げると医師の労働時間が強制的に減らされます。救急もそれを逃れることはできないでしょう。

 

また、今の若手医師はストレスやリスクの高い科を避ける傾向が強まっています。救急医療はまさにストレス、リスクの塊ですから今後医師が不足していくと思われます。

 

 医療崩壊は夢物語などではなく、既に始まっていると私は考えています。新型コロナで、医療体制が予想以上に脆弱であったことは皆様もご存じのとおりと思います。適切な時間外救急の理由がなされないと、救急医療の崩壊もそう遠くないのではないかと感じています。

 

まとめ

 今回は時間外救急外来に携わる身として、どのようなところか知ってほしい、適切に利用してほしいという想いからこのような記事を書かせていただきました。若干上から目線のような書き方になってしまったところもあり、不快に感じたら申し訳ございません。

 ですが、時間外救急外来は本当に医療者の負担が重く、維持するためには皆様の協力が不可欠です。何卒宜しくお願い致します。