はじめに
医療系の記事として、良い医者 (内科医)がしていることの外来編を書かせていただきま
した。今回はその2になります。前回は話をよく聞いてくれる内科医が良い内科医とい
う当たり前の内容を理由を付けて説明しました。
拍子抜けだった方、申し訳ございません。ですが、結局のところ当たり前のことを面倒
と思わずにきちんとやると言うことが大事なんですよね。
そういう意味では今回も当たり前かもしれませんが、治療内容の説明が的確であ
る医師が良い医師ですよという話をしていきたいと思います。
治療内容の説明が何故重要か
何か病気が見つかって、治療をしなければならないとなったとき当然医師から説明があ
ると思います。そのとき私は最低以下の4つが含まれていることが必要と考えていま
す。
- 何故治療をしなければいけないのか
- 治療をしない場合に予想される経過
- 実際の治療内容と合併症
- 治療のゴールは何か
すべてが重要なので、一つ一つ解説していきます。長くなってしまったので、今回は2
までとします。
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何故治療をしなければいけないのか
これ、とーーーっても大事です。えーそうかな?と思った方、少なくないかもしれませ
んね。確かに何か症状があって受診したときやいわゆる悪い病気 (癌など)であれば治療
の理由というのは明確でしょう。
しかしながら、内科の病気は症状が乏しかったり完治しないものが多いのです。
代表的なのは高血圧症や糖尿病などのいわゆる生活習慣病です。
生活習慣病は本当に厄介で、症状も無くいきなり体の調子を悪くすることもありませ
ん。しかしながら放置していると脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などのいわゆる心血管系の
イベントを起こすリスクが飛躍的に上がります。何かが起こってからでは遅いのです。
そのため、医師としてはなんとか治療をしなければいけないと患者さんに思っていただ
かないといけません。この段階で失敗すると、そもそも通院すらしてくれません。
ここが内科医としては腕の見せ所で、喋りで患者さんの心を動かさなくてはいけませ
ん。多くの患者さんは、きちんとお話すればご理解いただけますが、そうでない患者さ
んも決して少なくはありません。
一個だけここぞというときに私が使う質問を挙げさせていただきますと、なかなか治療
意欲がわかない方に対しては
あなたが人生で大事にしているものは何ですか?
というものがあります。その答えは仕事であったり家族であったり、趣味であったり
様々です。その大事にしているものを、失うかもしれない。それは悲しくはないです
か?よく考えてみてくださいね、と話を終えます。
普段自分が人生で大事にしているものなんて、なかなか考えないと思います。ましてや
それを失うなんてなおさらです。たかが生活習慣病の治療で大げさだな、と思うかもし
れません。
私は医者という仕事を病気を治せるスゲーお仕事!とは全く思ってないのです。
患者さんの病気が治るのを少しだけお手伝いさせていただく、と思っています。
患者さんの治療意欲がないと、医師はどんな病気も治すことが難しいのです。
それは生活習慣病であろうが、治療の難しい病気であろうが変わりありません。ですの
で、手を抜いてはいけないと考えています。
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治療しない場合に予想される経過
これは上記の内容と重複しますが、ここで言いたいのはさじ加減です。
患者さんは一人たりとも同じと言うことはありません。治療しない場合のデメリットを
強調することが向かない人と、向いている人が居ます。
既に治療意欲のある人に治療しない場合の話をしても仕方がないですね。
自分に甘い人には時には発破をかけるという意味で厳しいことを言うことが効果的なこ
ともありますが、やり過ぎは厳禁です。怖くなって外来に来なくなります笑
ちなみに余談ですが、以前の国家試験で患者さんの治療意欲を向上させるためにどれが
効果的か?みたいな問題が出たことがあります。
その答えは何故治療意欲がわかないのかを質問する、というものであったと記憶してお
ります。学生ながらにそれで良いのかなあ・・?と思いました。
患者さんのキャラクターによって適切な質問は変わってくるわけで、いまだにこの問題
は悪問だなあと思っています。
そして選択肢の中に治療しない場合のデメリットをこれでもかと説明する、というもの
もあり当然×なのですが。。びっくりしたのは禁忌肢になっていたことです。
※禁忌肢とは絶対に選んではいけない選択肢のことです。
実際にはそれをやらないといけないことも無いわけでは無いんですけどね。。
話が脱線してしまいましたが、基本的には1のなぜ治療をしなければいけないのかの延
長線です。1でうまくいっていれば、ここは特に難しくないと思っています。
まとめ
今回はよい医者は喋りで患者の治療意欲をかきたてることができる、という内容をお話
ししました。医者の仕事って手術をしたり針を刺したり、はたまた頭を使って色々なこ
とを考えるものだと思われがちです。それは間違いではないのですが、実は仕事の半分
は患者さんとの対話です。話が上手な医者はよい医者である確率が高いと思います!
次回に続く